截金ガラスについて


              電気炉にてガラスを焼成                 截金を封入したガラスの整形加工

 
 私は大学で古典絵画の模写研究をしていて、截金に出会いました。良き師に恵まれ、截金の道へ導いていただき、截金の美しさだけではなく、祈りにも似た制作行為の深い精神性に強く魅かれ、いつしか截金で何かを表現したいと思うようになりました。
 しかし、「截金で表現する」、それはとても難しいことだったのです。
 截金は「仏様におべべをお着せする」という重要な役割を持ち、千年以上の歴史を持って発展してきたため、截金はそのものを美しく引き立てようとする、加飾の力がとても強いのです。絵画、彫刻、工芸品など、様々なものに試みましたが、截金を表面に施した瞬間、截金はそのものを飾ろうと献身してしまいます。強い輝きを持ちながら、しかしどのような素材、色にも馴染む金箔の不思議な素材の特性でしょうか。
 
 ー「飾る」という役目からの開放 ー
 長年悩み抜いた末、截金を主役にするためには、ものの表面に施すのではなく、空間へ浮遊させてその存在を独立させる必要がある、との結論に達しました。
 そこで私は透明なガラスの中へ封じ込めることを思いついたのです。
 ガラスの空間の中で、自由になった截金は立体的に交わり、三次元にねじれ、複雑に反射し、截金自身が雄弁なおしゃべりと強烈な自己主張を始めました。
 私はガラスの技術を身につけて、ようやく截金で自由に表現する手段を得ることができたのです。


目指すは深淵な美の世界


 国宝源氏物語絵巻。まさに截金が隆盛した平安時代に描かれた絵巻です。私はこの作品の模写を通して、絵師の技術の高さはもちろん、小さい画面にかけられた膨大な手間と美に対する厳しいこだわりを知りました。ちょっと見ただけではわからない細部まで丁寧に描き込まれ、見る人の視線を奥へ奥へと誘い込み、引き付け、どれだけ眺めていても見飽きることはありません。
 私はこの深淵な美の世界をガラスの中に作ることを目標に制作しています。
 一瞬では見切れない、何時までも眺めていたいような、限りなく美しく深い世界。ガラスの中の截金はあえて抽象的な文様の構成にとどめ、ご覧いただく方々に自由に心を投影して楽しんでいただけたら、と願っています。